穂刈夢アンソロ用に書いたお話ですがボツにしたためこちらにて供養。
アンソロと一部同じセリフや似た展開があります。
微かな金属音が遠くで鳴り響いたような気がした。目蓋が微かに痙攣し、意識が徐々に覚醒していく。まどろみから引き戻された視界には、薄暗い部屋の天井に映る電灯のぼんやりとした光が映り込んでいた。体を少し動かし、隣に目をやると、そこにいるはずの人の姿はなく、シーツが僅かに冷たく感じられた。
──ああ。いつものか。
ゆっくりと上体を起こし、カーテンの端から外を覗き込む。まだ日の出前の薄い朝靄が漂う空気の中で、外の景色がぼんやりと見える。窓の外にある歩道を見下ろすと、見慣れた姿がふと目に入った。三階の窓からよく見えるその人物は、昨夜隣で眠っていた恋人、穂刈篤だった。彼はネイビーとブラックのツートンカラーのランニングウェアに身を包み、こちらに気づくことなく軽やかに歩を進めている。
時計を確認すると、時刻は午前六時近く。恋人が泊まりに来ていようが、彼の日課であるランニングは欠かさないらしい。そのストイックさには毎度感心する。鍛えられた体つきは、筋トレを趣味とする彼の努力の証でもある。
自分も体を動かすことは好きだが、彼ほど習慣的に続けているわけではない。たまに一緒に走ることもあるけれど、今朝は体が思うように動かない。昨日の疲れが残っているせいだろう。ベッドから起き上がる気力すら湧いてこなかった。
「こんな早朝から走るなんて、元気だな」
自然と独り言が漏れた。最近は試験や任務ですれ違いばかりだったが、昨日は久しぶりに二人の時間を持てた。その喜びから互いに求め合い深く結びついた夜を過ごしたが、その代償として疲労感が全身を覆っている。
眠るのも遅くなったはずなのにいつも通りの時間に起きていた。まったく、タフな男だと改めて思う。
彼の姿が歩道の向こうに消えたのを見届けると、再びベッドに身を沈める。穂刈が帰ってくる前に朝食の準備をしようと思っていたが、瞼は重く、意識は朦朧としてきた。
ベッドに残る彼の柔らかな匂いに包まれながら、ゆっくりと深い呼吸を繰り返すうちに再びまどろみが訪れ、身体の力が抜けていく。
意識が遠のいていくのは思ったよりも早かった。
***
次に目を開けたとき、最初に視界に入ってきたのは、至近距離で私の顔をじっと見つめる穂刈の顔だった。彼は両手で頬杖をつき、私をまじまじと観察している。寝ぼけたままぼんやりと彼を見返していると、穂刈が小さく笑った。その笑みが妙に心地よく、ランニングから戻ってきたことにも気づかないほどぐっすりと眠っていたのだと悟る。髪が湿っているところを見ると、シャワーを浴びた後なのだろうか。
「おはよう」
「おはよう……おかえり?」
掠れた声でそう返すと、穂刈は何も言わずに微笑み続ける。その表情はまるで愛玩動物を愛でるかのようだ。
きっと私は寝起きで締まりのない間抜けな顔をしているのだろう。そんなことを思いながら、穂刈の視線に少しだけ気恥ずかしさを感じた。
「見てないで、起こしてよ」
「気持ちよさそうに寝ていたからな。可愛かったぞ、寝顔」
「はいはい」
さらりと褒め言葉を口にするのに対して、私は気恥ずかしさを隠すために適当に返事をする。穂刈篤という男は、無表情のまま人が照れるような台詞をまるで躊躇なく言ってしまう。しかも、それが気障ったらしいわけではなく飾らない言葉だから余計に心に響く。
ぼんやりとした意識の中で、重い身体をゆっくりと起こし、両手を天井に向かって伸ばす。背中の筋肉が心地よく解れていくのを感じていると、穂刈がベッドのふちに腰かけ、私の頭を優しく撫でてきた。
「大丈夫か? 身体は」
「平気」
「そうか。ならよかった」
彼の無骨な手が私の髪を梳きながら優しく頭を撫でる。その仕草に安らぎを覚えると同時に、窓から差し込む朝の光が穂刈の顔を照らし出す。
なんだろう、今日はいつもより甘い雰囲気を感じる。
長い間友人として過ごしてきたせいか、恋人になってからもこうして甘い空気を漂わせられると妙に落ち着かない。
穂刈の視線が私をじっと捉えたまま、彼の手が私の頬に触れた。
親指がゆっくりと私の唇をなぞっていく。その瞬間、穂刈の表情がふと変わり彼の顔が徐々に近づいてきた。反射的に私は手で彼の口元を押さえて接近を阻むと、穂刈の不満げな瞳が私を捉えた。
「え? なに?」
「キス。駄目なのか?」
「だめっていうか……顔洗ってないし、歯も磨いてないし」
「構わない」
「いや、私は構うから」
「いいだろ? 舌は入れない」
私が返事をする前に、彼は手をどけて顔をぐっと近づけてきた。構える間もなく彼の唇が私の唇にふわりと触れる。
軽く、ちゅ、ちゅ、とリップ音が響き、唇の感触を楽しむように何度も優しく食んでくる。可愛らしいキスに、思わずくすぐったさを感じて口元が自然と緩んでしまった。
「ふふ、ちょっと」
「ん」
「もう終わり」
静止の言葉に耳を傾ける素振りも見せずなおも唇を寄せてくる。遊びのような触れ合いを繰り返せばいつしかじゃれ合いになっていって、穂刈は腰を抱き寄せ私の身体の上に覆い被さってきた。彼の重みでベッドのスプリングが軋む。首元に顔をうずめてすん、と匂いを嗅がれた。身を捩ったがすぐに抱き込まれてしまい逃げることは叶わなかった。
「重い。どいて」
「いやだ。逃げるだろ?」
「……」
否定も肯定もしないでいると再び口づけを落とされる。額、瞼、鼻筋、頬、顎。顔中に唇を押しつけられる。カーテン越しに朝日が差し込み、穂刈の輪郭が白く浮き上がる。
「ん……っ」
今度は軽く唇同士が触れ合う程度ではない。食むように何度も角度を変えて吸い付いてきた。寝巻き代わりのTシャツの中に手を忍ばせてくる。ざらりとした指先が腹を撫でる感覚。肌が粟立ってぴくりと身体が反応してしまった。ただのじゃれ合いだった行為は徐々に熱がこもり始めている。
これは、まずい。やる気になってる。
ショーツとTシャツしか身に着けておらず無防備な状態になっている私の身体の線をなぞるように穂刈は手のひらを動かす。明らかに色を含んだ手つきだった。一度燃え上がると穂刈はなかなか冷めてくれないから厄介だ。昨晩もさんざん私を好き勝手したくせにまだ足りないのかこの男は。などと心の中で悪態をつくも抵抗らしい抵抗ができずされるがままになっている。
「ちょ、っとストップ」
力を込めて肩を押すとやっと穂刈が顔を上げた。不服そうな空気を漂わせてはいたが、とりあえず私の言葉に耳を傾けてくれるらしい。
「するの?」
「ダメか?」
「だ、だめっていうか。昨日したじゃん」
「足りない全然」
「えぇ……」
ストレートな物言いに少したじろいでしまう。しかし穂刈は引く気はさらさらないらしく、なおもじっとこちらを見つめている。
「いや、だってほら、朝だし」
「関係ないだろうそれは」
「走ってきて疲れてるでしょ。だから、ね?」
「むしろ元気が有り余って困っている。ほら」
Tシャツの裾を握っていた私の手を掴むと下半身へと導いていく。手の平に感じたのは固い感触で、既に兆し始めている彼のモノが押し付けられた。
いやなんでもうこんなになってるのよ……。
「いやいやいや」
「朝だからな」
「意味わかんないんだけど。もうやだ、手離して」
「断る」
穂刈は私と目を合わせながら触れと言わんばかりに私の手の平にぐいぐいと上下に擦り始めた。布越しでもわかる熱さと硬さに頬が熱くなる。なんで朝からこんな恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだ。抵抗の甲斐なく、穂刈は私を押さえ込むと耳や首筋を食んでいく。
「うっ……」
熱い吐息とぬめりとした舌の感触に肌が粟立ち、思わず声が出てしまった。耳たぶを食みながら穂刈の右手はTシャツの中に侵入してき、薄い腹を撫でていく。本気でやる気だ。こうなったらもう止められない。ため息をひとつこぼして穂刈の首に手を回す。
「わかった、いいよ。ただ……」
返事を聞くや否や穂刈は性急に唇を重ねてきた。再び私の身体を暴こうとする彼の手つきに待ったをかける。
額と顎に手を当て押し返しながら「シャワー浴びさせて!」と叫んだ。
***
穂刈と付き合い始めて知ったことがある。彼は見た目に反して想像以上に情熱的な男だった。
クールで冷静そうな印象を持っていたが、友達だった頃からそのお茶目な一面は知っていた。彼が甘い言葉を口にしたときは冗談だと軽く流していた。だから、本気のアプローチにまったく気づかずにスルーしていた私に、「冗談でこんなこと言うわけないだろ」と、半ば強引に迫ってきたときは本当に驚いた。
それでも、付き合い始めてからの私たちの関係は大きく変わることはなかった。今まで通り、友達の延長線上にあるような自然な距離感のままだった。
お互いのことをよく知っているからこそ、恋人としてどう接すればいいのかわからない私に、穂刈は無理に求めることなくそっと寄り添ってくれていたのだと思う。
そんな彼の優しさに助けられながら、大学入学と同時に始まった一人暮らしで私たちはついに一線を越えた。
初めて身体を重ねた夜のことはあまり覚えていない。緊張しすぎて何が起きているのか正確に感じ取る余裕がなかったのだと思う。
ただ、穂刈は終始優しかった。彼は、私を抱きしめながら何度も「好きだ」と囁いてくれた。その囁きがどれほど情熱的だったか。その声に身体が自然と反応し次第に熱を帯びていったことは、忘れられない。
「んっ、ん……っ」
穂刈の舌が私の口内を蹂躙していく。舌のざらついた部分が擦れ合う度に甘い快感が生まれていく。舌も歯列も上顎も頬の裏も、口内のありとあらゆる場所を穂刈は丁寧に舐め回していった。私の舌を吸っては甘噛みして、また絡めてくる。
なんとかシャワーを終わらせてバスルームから出たらまともに着替える余裕も与えられずベッドに引き摺り込まれてしまった。穂刈の熱い視線に捕らえられて目が離せない。今からこの男に抱かれるのだという期待に下腹が疼く。
静かな部屋には私と穂刈が舌を絡める水音と互いの吐息だけが響いていた。ようやく解放された時にはすっかり息が上がってしまっていた。
「はぁ……も、むり……」
身体からは力が抜けきっていてされるがままになってしまう。そんな私を見下ろしながら穂刈は手の甲で口元を拭った。
「すまない。つい夢中になった」
呼吸を整える暇もなく再び唇が重ねられた。先程とは違って触れ合うだけの優しいキスだった。唇を食まれながら頬に添えられていた手が下がっていき私の身体を弄る。Tシャツの上から胸に触れ、やわやわと揉みしだかれる。ブラジャーはしていない。布一枚隔てたところで穂刈の無骨な指が私の胸の形を確かめるように動いていく。穂刈の愛撫に反応して胸の中心が徐々に芯を持ち始めた。指の動きに合わせてTシャツが皺を作りながら形を変えていく。
「あっ」
Tシャツを首元まで捲り上げられて、露わになった胸に穂刈は顔を埋めた。生温かい吐息が胸の先端を掠める。
「あ、や」
ピンク色の突起を生温かい舌でべろりと舐められて思わず声が出た。そのまま口の中に含んで強く吸われる。もう片方は指先で摘ままれ擦られて刺激を与えられた。触れられたところがじんじんと熱を持ち始め、そこから快楽が全身へ広がっていく。
ちゅうっと音を立てて穂刈は突起を口から離す。唾液で濡れたそこは赤く腫れ上がり主張を強めていた。もう片方も同じように吸い上げて今度は甘く噛んでくる。たまらず私は穂刈の頭を抱え込んでしまった。胸を突き出すような体勢になってしまいさらに強く吸い付かれてしまう。執拗に胸を愛撫され快感が蓄積されていく。身体が熱い。もっと強い刺激が欲しい。無意識に穂刈に胸を押し付けるような格好になってしまい、それに応えるように強く歯を立てられた。
「いっ……」
鋭い刺激に背中が仰け反る。痛みと快楽が混じり合って頭が痺れていく。その反応を見て穂刈は満足そうに微笑むと再び胸に吸い付いた。優しく舌で舐め回され、緩急をつけた攻め方に私の口からは絶えず甘い声が漏れ続けた。
「ん、あっ、あ……っ!」
「可愛いな、お前は」
「っ、ばか」
穂刈は胸に吸い付いたまま空いた手で私の下半身へ手を伸ばした。ハーフパンツ越しに太ももを撫で回していく。足の付け根ギリギリまで指を滑らせると下着のラインをなぞっていく。中心で指の動きが止まり、焦らすようにぐぐっと食い込ませてくる。
「ぁ……っ」
「濡れてる」
耳元で囁かれた。穂刈の熱い吐息が耳たぶにかかり、それだけでも身体が反応してしまう。穂刈は下着の中に手を侵入させ、直に私の秘部に触れてきた。そこはまだ胸への愛撫しか受けていないにも関わらず潤んでいて彼の指を受け入れようとひくついている。
昨夜散々抱かれて彼に触れられたはずの場所が熱を持って疼きだす。早く彼でいっぱいに埋めて欲しい。そんな欲望が募り秘部に触れている彼の手に擦り付けるように腰を動かしてしまった。その様子を見た彼はふっと笑みをこぼして、おもむろに私の足を持ち上げるとその間に顔を埋めてきた。ショーツのクロッチ部分を指でずらす。露わになった秘部は外気に触れひやりと冷たく感じる。しかしすぐに温かい吐息を感じて次の瞬間にはぬるりとした感触がそこを襲う。
「ひっ、あッ」
秘部を舐められ、そして吸われる。じゅっという水音とともに強い刺激が全身を駆け巡っていく。穂刈は舌全体を使ってべろりと大きく舐め上げた後、尖らせた舌先で陰核をつつくように刺激を与えてきた。その度びくびくと腰が跳ねて身体の奥が熱くなる。
「あ、っんん……っ!」
割れ目に舌を差し込み溢れた蜜を舐め取りながら穂刈は両手で私の太ももを鷲掴みにした。そして秘部全体を包み込みむしゃぶりつくように顔を押しつける。ぢゅっ、ぢゅうっという音が耳に響いて羞恥心を煽る。だがそんなことを気にしている余裕もなく、私は襲いくる快楽をただ受け止めるしかなかった。
「う……んぁ、ほ……かりぃ」
「うん?」
名前を呼べばちらりとこちらを見てくる。しかし舌が動きを止めることはない。じゅっ、という下品な音と荒くなる息遣いだけが響く。穂刈の唾液と、そしてとめどなく溢れてくる蜜が混ざり合いシーツに染みを作っていく。
私はもう限界で、早く楽になりたくて自ら足を開いた。私の痴態に満足したのか、穂刈は身体を起こすとにやりと笑ってスウェットを脱ぎ捨てた。その中心は窮屈そうに布を押し上げて主張している。私はそれを見てごくりと喉を鳴らした。早く欲しい。あれが、あの大きなものが奥まで入ってきて私を滅茶苦茶にするのだ。想像しただけで下腹部がきゅんと疼くのを感じた。穂刈は私の足の間に割って入ると、指の腹で蜜壷の入口をくるくると撫で回し始めた。そしてゆっくりと中に侵入してくる。
「あっ、んん……っ」
太い指が膣内の壁を擦り上げながら奥へと進んでいく。昨晩さんざん愛されたそこは既に柔らかく蕩けていて難なく彼の指を受け入れている。一本、また一本と指の数が増えていく。
「気持ちいいか?」
「ん……っ」
穂刈の問いかけに私はこくりと小さく首を縦に動かした。穂刈の指は的確に私の感じる部分を捉えてくる。くちゅくちゅといやらしい音を立てながら中を掻き回され、私は枕を抱き締めながら快感に耐えていた。穂刈の指の動きに合わせて腰が勝手に揺れてしまう。穂刈は私をじっと見つめながら指を動かし続ける。
「動いてるぞ腰が」
穂刈は空いている手で私の腰を撫でる。その手つきが私の性感を煽っていく。
「あ……ん、だって……」
穂刈は再び私に覆い被さると唇を合わせた。舌を差し込まれ口内を蹂躙される。お互いの唾液が混じり合ってどちらのものか分からなくなっていく。その間も穂刈は指の動きを止めなかった。むしろ激しさを増していった。
指で内壁を擦られ、親指で陰核を潰される。与えられる刺激に思考回路は焼き切れてしまったようだ。理性はとうの昔に吹き飛びただひたすら快楽を求めるように腰を揺らしている自分がいる。もっと強い刺激が欲しい。もっと奥まで満たして欲しい。穂刈が欲しい、ただそれだけだった。
私の反応を見た穂刈は満足そうな表情を浮かべると一気に指を引き抜いた。異物を失った秘部が切なげにひくつく。
穂刈の首の後ろに腕を回し引き寄せた。そして耳元に唇を寄せる。
「はやくいれて」
滲んだ視界で穂刈の喉仏が大きく上下するのが見えた。ヘッドボードの引き出しから避妊具を取り出して荒々しくパッケージを破り捨てた。その様子がやけに男臭くて、心臓が大きく跳ねる。
「足開け。もっと」
粗雑な物言いとは裏腹に、穂刈の触れ方はいつも優しい。避妊具を手早く装着し私の膝裏を掴むとぐいっと押し上げた。恥部が曝け出される格好になり羞恥心が込み上げてくる。だがそれよりも早く穂刈自身が入ってくる方が先だった。熱い塊が入口に触れたと思った次の瞬間、穂刈は一気に奥まで挿入してきた。
あまりの質量に一瞬息が止まる。待ち望んでいた刺激をようやく与えられた喜びで膣壁がうねるように動くのがわかった。
「は、あ……っ」
「っ……」
穂刈が苦しそうに眉を顰める。しかしその表情はすぐに恍惚とした表情に変わっていった。私の顔の横に両手をつくとゆっくりと腰を動かし始めた。腰をピッタリと密着させて奥をぐりぐりと刺激する。めりめりと私のなかを押し広げながら穂刈自身が中に入ってくる。圧迫感に息が詰まったがそれ以上に充足感の方が勝っていた。
膣内は十分すぎるほど潤っていて彼の剛直を容易く受け入れていく。じんわりとした甘い快感が全身に広がっていき、シーツを強く握り締めた。一定のリズムで腰を打ち付けながら穂刈は私の唇を貪るように吸った。
「ん、ふ……」
舌を絡め取られ口内の粘膜まで犯されていくような感覚に酔いしれる。その間も穂刈の腰の動きは止まらず、深い口づけを交わしたまま激しく揺さぶられ続けた。結合部から聞こえる水音とお互いの息遣いだけが静かな部屋に響き渡る。
「っ……ん、んん……っ」
キスで口を塞がれているせいでうまく呼吸ができず酸欠状態になり頭がぼーっとしてくる。酸素を求めて顔を逸らそうとするも後頭部を押さえ付けられてしまいそれは叶わなかった。苦しいのに気持ちいい。
相反する感情に戸惑いながらも私の身体はますます熱を帯びていくばかりだった。
唇を離してくれた頃にはすっかり力が抜けていた。だらりと全身から力が抜けてしまった私を穂刈は愛おしげに見つめていたが、私の腰を掴むとぐるりと身体を回転させてうつぶせにしてきた。
「あ、なに……」
「嫌か? 後ろからは」
背中に覆いかぶさり、耳元で囁くように問いかけてきた。その声音にぞくりとしたものが背筋を走る。 枕に顔を押し付けながら小さく首を横に振った。
「嫌じゃない」
「そうか」
満足げに呟くと穂刈は私の腰を掴み直した。そして再びゆっくりと挿入していく。先ほどとは当たる角度が変わって新たな快感が生まれていく。奥まで到達すると今度はぎりぎりまで引き抜かれる。そしてまた一気に最奥を穿たれた。その衝撃にたまらず悲鳴じみた喘ぎが口から漏れる。
「ああッ」
パン、パンと肌がぶつかる音が部屋中に響く。背後からの激しい攻め立てに翻弄されながらも必死に枕を抱きしめて快楽に耐えていた。枕からは彼の匂いがし、ますます身体が敏感になっていく。動く度に彼の剛直を締め付けているのが自分でもわかった。
「あっ、あ……っ!」
後ろから激しく突かれる度に声が押し出されてしまい言葉にならない声しか出せない。枕に顔を押し付けて声を押し殺そうとするもすぐに引き剥がされてしまい結局意味をなさなかった。
「もっと聞きたい、声」
穂刈は腰を動かしながら私のうなじや背中にキスを落としていく。時おり強く吸い付かれその度に身体が大きく跳ねた。彼の熱い吐息が肌に触れ、それすらも快感へと変わっていく。
「ひぁっ、んっ……あぁッ」
奥深くまで突き上げられ身体が震える。激しい抽挿に膣内は痙攣しっぱなしでずっと甘イキ状態が続いていた。それでも穂刈の動きは止まらずむしろ激しさを増していく一方だ。
爽やかな朝に似つかわしくない淫らな水音と喘ぎ声が響き渡る。もう既に私の理性はぐずぐずに溶けきっており、与えられる快感を受け入れるしかなかった。
「あっあぁっ……ほ、かりっ……」
「イキそうか?」
「ん、うんっ」
助けを求めるように名前を呼べば穂刈は私の腰を掴んで引き寄せると更に強く打ち付けてきた。膣内を押し広げられる度に背筋を快感が走り抜けていく。限界が近づいてきているのか穂刈の息遣いも荒くなっていた。膝の力はもう入らず、お尻だけを上げた状態で繋がっている。
押し潰すように体重をかけられ、その重みと圧迫感に意識が飛びそうになる。
「はっ、はぁ……」
肩口に顔を埋め、荒い呼吸音が耳元で聞こえる。汗ばんだ肌が重なり合いお互いの体温が溶け合っていく感覚。穂刈は更に腰を押し付けてきた。ぐっぐっと子宮口を刺激され私の身体は大きく跳ね上がり、内壁がうねり穂刈自身をきつく締め上げる。
「……っ」
ぶるりと腰を震わせて穂刈も達したようだ。脈打つ感覚を薄い膜越しに感じながら、ぐったりと枕に顔を埋める。
はあはあと荒い息を吐きながら呼吸を整える。背中に穂刈の体温と鼓動を感じながらぼんやりとした余韻に浸っていると、穂刈がずるりと自身を抜いた。引き抜かれる感触に身体が震える。栓を失った秘部からはとろりとしたものが溢れてくるのを感じた。
穂刈はゴムを外すと口を縛ってゴミ箱に捨てた。そして私の隣に寝転ぶと優しく頭を撫でてくる。その優しい手つきに安堵感を覚えつつ、ゆっくりと身体を回転させて穂刈の方へ向き直った。
「大丈夫か?」
肘をついて少しだけ身体を起こし私の顔色を窺ってくる。見下ろす彼の瞳をじっと見つめながら、両手で穂刈の頬を包み込むとぐっとつねってやった。
「激し過ぎ」
「悪い、夢中になった」
「もう……」
頬を軽くつねりながら唇を尖らせると、穂刈はふっと表情を和らげた。素直に謝る彼が私の手をそっと握り、指先を絡めるようにして握り返してくる。そのまま、彼は私の手を持ち上げ手の甲に柔らかく唇を落とした。その動作があまりにも自然でされるがままになっていた。
体に残る行為の後の気怠さと穂刈の優しい視線が重なり、先程の快感が再び胸の奥からじんわりと蘇ってくる。
穂刈のその愛おしげな視線――きっとこの姿は私しか知らないのだろう。
そう思うと、胸の奥にあった愛しさが溢れ出すように一層強まっていく。ふとした瞬間に見せてくれる彼の甘さや優しさに触れるたび、好きだという感情が少しずつ積み重なっていく。
言葉にするよりもその想いを伝えるように、私は目の前にある彼の厚い胸板にそっと額を寄せた。
「穂刈……」
甘えた声でそう告げると、私の顎を持ち上げて唇を塞いだ。軽く触れ合った後すぐに離れていく。物足りなさを感じて彼の首に腕を回すと今度は自分から口づけた。
一瞬驚いたように目を見開いたがすぐに応えてくれた。
「ん……っ」
無意識に太腿を彼のものに擦り付けると、穂刈が息を詰まらせたのが分かった。その反応にふっと笑みを零して彼の耳元に唇を寄せる。
「ね、もっかいしよ」