静かな夜が、部屋の隅々までじんわりと染み渡っていた。風に揺れるカーテンの隙間から、初夏の温もりが静かに入り込んでくる。
シンクに流れる水音と、食器をそっとこすり合わせる微かな音だけが、爆豪と名前の間に漂っていた。
夜の静けさがまるで二人を包み込み、互いの存在が一層際立って感じられる、そんなひとときだった。
「なあ。今日、いいか」
ふいに静寂を破るように、爆豪の声が響いた。いつもの勢いを抑えた慎重な調子がその声にはこもっている。その問いかけに手を止めた名前がそっと視線を向けると、爆豪は静かな表情のまま皿に視線を落としていた。
──今日、いいか。
その言葉が耳に残り、名前の頭の中で静かに反響する。言葉の端に曖昧さが残るものの、二人の関係性を思えば、何を求めているのかは自然と察しがつく。
忙しい日々のなか、二人で会う時間は少ないものの恋人同士として幾度か夜を共に過ごしているのに、爆豪は律儀に「今日はいいか」と確認を求めてくる。泊まりに来ている時点で答えは明白のはずなのに。
名前は再び視線を手元の皿へと戻した。決して嫌なわけではないし、断るつもりもない。ただ、毎回こうして聞かれると妙に気恥ずかしく、少し居心地の悪い感じがしてしまうのだ。彼の言葉によって、自分がこれから何をするのかを改めて意識させられるようで……。
そのたびに鼓動が早まり、胸の奥に熱がじわじわと広がっていくのを抑えられないでいた。
「……うん」
小さく頷くと、爆豪の口元がわずかに和らいだ。普段は険しい顔つきの彼が見せたその一瞬の柔らかな表情が、名前の胸をさらに揺さぶる。長い片思いの末にようやく結ばれた今も、こうして新しい一面に触れるたび、まるで夢の中にいるかのようだ。
「聞かなくても大丈夫だからね」
少し照れながら、精一杯の勇気を出して告げる。その言葉に、爆豪は一瞬不機嫌そうに眉をひそめた。
「あ?」
「だって爆豪くんいつも聞いてくるでしょ。今日はいいか、って」
「……それがなんだよ」
「気遣わなくていいんだよ。こ、断ったりしないし……」
穏やかに告げられた言葉に、爆豪は一瞬返す言葉を失い、視線を逸らすようにわずかに顔を背けた。「ああ……」と小さくため息のように呟くが、その表情にはどこか気まずさがにじみ出ている。普段は見せない戸惑いが、その瞳にほんの一瞬だけ浮かんでいた。
「ちげーわ」
「……違う?」
名前が首をかしげると、爆豪は視線をさっと逸らし、再び何も言わずに食器を拭き始めた。しかし、その手の動きはどこかぎこちなく、心の中の戸惑いがその仕草に表れているようだった。
「気を遣ってるわけじゃねェよ」
「じゃあどうして毎回聞いてくるの? 同じ答えを返すんだから、聞かなくてもいいのに」
不思議そうに問いかける名前に、爆豪は手を止め、彼女をじっと見つめた。まるで品定めでもするかのような眼差しで。
「なに?」
「あー……。お前、恥ずかしそうにすんだろ」
「え?」
「その顔を見ると、なんつーか」
言い淀みながら頭を掻いた。
「興奮する」
「……へ?」
「俺に今から抱かれるんだって自覚しとるお前見んの、たまんねェんだわ」
名前は一瞬、彼の言葉の意味を理解できずに、ただじっと彼を見つめ返していた。しかし、次第にその意図が脳裏に浸透すると、驚きとともに顔が急速に熱を帯びていくのを感じた。
「な、なにそれ……! そんな顔してないっ」
名前は頬を紅潮させながら、慌ててそう言い返したが、心の中で自分の表情がすっかり見透かされているような気がして、さらに恥ずかしさが込み上げてきた。どうにか平静を装おうとするも、熱を帯びた顔を隠すように俯くしかできない。
空気がわずかに動き、爆豪の温かい吐息が耳元に触れた。やがて、鼓膜に直接届くような低くて静かな声が囁く。
「……こういう時、すぐ顔に出んのな」
名前の顔がますます赤くなっていくのを見て、爆豪はわずかに口元を引き締め、笑いを噛み殺すように表情を歪めた。その目には、からかうような色が見え隠れしている。
「やっぱり今日はしない。すぐ寝るから」
拗ねたように言い放つと、爆豪はクックッと小さく笑い声を漏らした。まるで彼女の反応を楽しんでいるかのように、視線をそらさない。
「ほら、さっさと片付けてベッド行くぞ」
軽い調子で言うその言葉に、名前はさらに顔を赤くして唇を噛む。小さな抵抗を見せたい気持ちが胸の内に芽生えるものの、結局は彼のペースに巻き込まれてしまう自分にほんの少し悔しさも感じていた。
***
薄暗い部屋に、小さな息遣いだけが響いていた。
ベッドの軋む音が、静寂に波紋のように広がっていく。その微かな音が、二人の熱をさらに加速させていくようだった。
爆豪は名前の体に優しく触れながら、その反応を確かめるように表情を見つめていた。指先が肌をなぞる度に彼女は小さく体を震わせる。
「んっ……あ……」
名前の唇から漏れる甘い声が静かな夜の中で静かに響くと、爆豪はその唇をそっと塞いだ。触れるだけの優しいキスは徐々に深くなり、互いの舌が絡み合う音が響く。その生々しい音に、名前の心拍数は上がり、体の奥底から甘い疼きが湧き上がってくるのを感じた。
「っ……ふ」
唇が離れると、二人の間に銀色の橋がかかり恥ずかしそうに手の甲で口元を隠した。爆豪は小さく笑い、そのまま首筋に顔を埋めた。丁寧に口付けを落としていく度に、名前の吐息が熱を増していった。
やがて爆豪の指先が胸の膨らみにそっと触れる。その感触に微かに瞼が震えた。爆豪の骨ばった指が肌の上を滑るように動き回る度に、切なげな声を漏らした。
控えめな胸の形を確認するようになぞり、ブラジャー越しに指先で頂を摘まむ。指先が敏感な箇所に触れる度、名前の口からは甘い声がこぼれ、それがさらに彼の興奮を高めていった。
「っあ、んん……っ」
もっとその反応を引き出したいという欲求に突き動かされ、ホックを外されたブラジャーがベッドの下に落ちる。爆豪の手のひらが直接肌に触れると、その体が小さく跳ねた。
名前の体を優しく抱き寄せながら、その柔らかな膨らみにそっと口づけを落とした。そして、舌先で胸の突起に触れ、軽く歯を立てると彼女の口からは甘い吐息が漏れ始める。
「や……っあ……」
何度も刺激を与えるうちに、呼吸は次第に荒くなっていきその体は熱を帯びていった。爆豪の唇が胸の曲線をなぞるように動くと、その動きに合わせて彼女の腰が自然と揺れ動いてしまう。
「あ……んんっ」
無意識の動作を恥じる気持ちが言葉に現れていたが、それさえ煽る材料に変わっていった。やがて爆豪の右手が下半身へ滑り込み、ゆっくりと彼女のショーツの中に侵入していく。その指先が割れ目に優しく触れると一際高い声を上げた。そこは既に十分な潤いを帯びており、爆豪が指を小刻みに動かすとグチュリという水音が響く。その音にますます羞恥心を煽られ、名前の顔は耳まで赤く染まっていった。
中指の第一関節までを埋め込み、秘裂をなぞるようになぞる動きを繰り返した後、膣内の奥深くへと押し進めていった。温かい膣内は指に絡みつき、肉襞がきゅうっと吸い付く感覚は爆豪の興奮をさらに煽っていった。その指の動きに合わせて、名前の口からは甘い吐息が漏れ続け、その瞳には涙が滲んでいる。
「っあ……ん……っ」
「ここがいいよなあ」
爆豪はどこか楽しげに呟き、内部を刺激する。薬差し指も挿入し内側の壁を擦り上げ刺激を与え続けると、名前は白い喉をのけ反らせながら嬌声を上げた。動きに合わせ、名前の腰も自然と揺れ動きその快感から逃れるようにシーツを握りしめた。
「っああっ、んっ……よ、汚れるから、脱がせて」
「もうおせーよ」
その懇願に、小さく笑うだけで彼女の言葉に従うことはなかった。それどころかさらに激しく指を動かし始め、名前の体の奥からは止めどなく愛液が溢れ出していった。
「あ……っや……あ……」
舌を絡ませながら一層深くまで指を挿入し、そして同時に親指で花芯を押し潰すように刺激した。名前はくぐもった喘ぎ声を漏らしながらすぐに上り詰めていく。やがてつま先にピンと力が入り、体を大きく仰け反らせた。
「……っ!」
声にならない悲鳴を上げて絶頂を迎えた名前は、そのままぐったりと脱力した。爆豪は満足げにその唇に口づけを落とすと、ズルリと彼女の中から指を引き抜く。ショーツにできた染みと名前の痴態に爆豪自身も昂り、冷静さを装ってはいたがその陰茎は痛いほどに張り詰めていた。スウェット越しでも分かるその存在感を目の当たりにした名前は恥ずかしそうに身を縮こまらせる。
「欲しそうな顔しやがって」
「ち、違っそんなんじゃ……」
「へえ?」
爆豪は意地の悪い笑みを浮かべると、腰に手を回しショーツのゴムの部分を軽く引っ張りながら耳元で囁いた。
「じゃあ、いらねえんだな?」
名前の体はもうすっかり熱を持ち、彼を求めて疼いているのは明白だった。それを見透かした爆豪の言葉に名前は言葉を詰まらせる。
「……意地悪」
「あ? 聞こえねえ」
ショーツをゆっくり下ろし、手早く自分の服を脱ぎ捨てた。裸になった爆豪の姿に名前の心臓は更に大きく高鳴っていく。硬く張りつめた陰茎が目に入り思わず喉を鳴らしてしまった。その熱量と質量に今から貫かれるのかと思うと、期待感で胸はますます熱くなり全身が火照り始める。
「見過ぎだっつの」
「!」
避妊具を装着した爆豪がからかうように笑う。名前はカッと顔に熱が集まるのを感じながらも、何も言えず口をつぐんだまま爆豪の様子を見つめていた。期待の色が滲んでいるように見えて、爆豪は無言のまま彼女を抱き寄せ再びベッドに沈み込んだ。
「挿れんぞ」
「うん……」
濡れぼそった秘裂に熱いものが押し当てられる感触に名前は小さく息を飲む。しかし、その先端が入り口に触れるだけでなかなか侵入してこないことに焦れったさを感じ始めた頃、ようやく陰茎が膣内へゆっくりと押し入ってきた。その質量に名前は小さく声を漏らす。
「んんっ」
「っは、熱……」
爆豪は熱っぽい吐息と共に呟いた。熱く濡れた膣内を押し広げながら奥へ進むたびに名前は眉を寄せて甘い声を上げる。奥まで到達したところで一度動きを止めると、抱きしめたまま唇を合わせる。
「ん……っふ……」
舌を絡ませながら、爆豪はゆるゆると腰を動かし始めた。最初はゆっくりとした動きだったそれは徐々に速さを増していき、名前の体を揺さぶっていく。
「あっ……ん……っ」
結合部からは淫猥な水音が響き渡り、その音がさらに二人を興奮させた。名前の口からは意味を持たない音が次々とこぼれ落ち、その瞳には涙が浮かんでいた。爆豪はその様子に愛おしさを覚えながら、更に激しく責め立てる。
「あっあっ……やだ……また、いっちゃう……!」
「我慢すんな」
そう言って一際強く腰を打ち付けると、名前は体を仰け反らせてビクビクッと大きく震えた。膣内の痙攣によって爆豪も達しそうになったがなんとか耐えた。そしてそのまま抽送を繰り返しながら、彼女の体を抱き寄せた。
「っあ、ん……っ」
「は……っ」
名前の両脚を肩にかけ、より密着した体勢になると、さらに深い部分へと陰茎が侵入していくのを感じた。圧迫感に一瞬苦しそうな表情を浮かべたが、すぐに快楽に蕩けた表情に変わる。爆豪はその顔をじっと見下ろす。すると、名前は恥じらうように顔を背けた。そして両手で自分の顔を隠す。
「そんなに見ないで……恥ずかしいから」
「ああ? 見せろや」
名前の手首を掴み、強引に引き剥がした。そうしてあらわになった彼女の表情を見つめる。
「今さら恥ずかしがることなんてねぇだろ」
「あるよ」
「俺とヤってる時はいつも気持ち良さそうな顔してんぞ」
「い、言わないで……」
「もっとよく見せろ」
爆豪は再び覆いかぶさると、名前の体を折り曲げて足を開かせた。結合部が露わになる。爆豪はそこに指を伸ばし、肉芽に触れると優しく擦り上げた。
「ああっ!」
ビクリと身を震わせる。爆豪は口角を上げそこを重点的に攻め立てた。彼女の膣内がキュッと締まるのを感じ取った爆豪はさらに激しく動いて何度も何度も強く打ちつける。
「んっ……あっ……ああ!」
喘ぎ声を上げ、爆豪の首に回された手に力が込められる。膣内が畝り、彼の欲を搾り取るような刺激に爆豪は小さく息を詰まらせた。そして抽送を早め、思い切り腰を打ち付けた。
「っあー……クソ」
爆豪の余裕のない声が出ると、名前は彼の背中に爪を立てた。その痛みさえ今は快感だった。爆豪はラストスパートをかけるべく、一際激しくピストンを繰り返した。肌がぶつかり合う音が響くたび、結合部からは愛液が飛び散りベッドのシーツを濡らした。
爆豪の背中にしがみつき必死にその快感に耐えていた。しかしそれも長くは続かず、やがて限界が訪れた。
「あ……や、また……いくっ」
爆豪はその体を強く抱きしめ、より深い所まで陰茎を押し込むと最奥部を穿った。
「っ!」
名前の爪が爆豪の背中に食い込んだ。それに応えるように彼女の唇を塞ぎ、舌を絡め取り吸い上げる。膣内が強く収縮し、爆豪は薄い膜の中にその欲を吐き出した。
荒い呼吸が交差する。名前が落ち着いたのを見計らい、ゆっくりと引き抜くと避妊具の先には白濁液が溜まっていた。それを慣れた手つきで処理しながら、彼女の隣に身を横たえた。
名前の瞳はすっかり快楽に溺れ切った色になっている。ぼんやりとした瞳の奥には淫猥な光が宿っていた。その目を見つめながら、再び欲を昂らせそうになる。無理は強いれないと思い留まろうとしたが、一度火がついた欲望はなかなか鎮まらないもので……。
名前の体をそっと抱き寄せるとそのまま腕の中に閉じ込める。そして再び唇を重ねた。舌を絡ませながらその体に手を這わせると彼女はピクリと反応を示すものの抵抗はしなかった。
そのまま胸や腰回りを愛撫し続け、やがてその手は下半身へと伸びていく。太腿から足の付け根までをゆっくりと撫で上げると、彼女は熱い吐息を漏らした。
「あ、え?」
爆豪は彼女の両脚を開かせ、その間に割って入ると、そのまま覆い被さるようにしてその首筋に吸い付いた。
「爆豪くん?」
「もう一回」
爆豪はその体をぎゅっと抱き締め、ゆるく勃ってる陰茎を割れ目に擦りつけた。
たいていはどちらかが明日も仕事だからとなるべく負担のないようにと切り上げることが多い。
でも、お互い翌日は非番。だから。
名前の全身にキスを降らせ、ゆっくりと熱を高めていく。次第に上がってくる呼吸も全て自分のものにしたい。時間をかけて心も体もぐずぐずに溶かしながら、大切に彼女を愛していくのだ。
「ああ……んっそういえば…」
「あ?」
臍のまわりに唇を落としていた爆豪が顔を上げる。
「今日ね、外回りに出た時に偶然、緑谷くんに会ったんだ」
「……は?」
緑谷という名前が彼の頭に響いた瞬間、思考が止まった。さっきまでの穏やかな気持ちが一瞬で消え、胸の奥に緊張が走る。
いま何と言った? 出久と会った?
爆豪の動揺をよそに、名前は微笑みながら話を続ける。
「久しぶりに会ったけど元気そうで安心した。コスチューム姿だったから、何か任務があったのかな。爆豪くん知ってる?」
「ちょっと待て。お前、出久と知り合いなンか?」
思わぬ展開に、彼の声が思わず強張った。目を丸くする名前のきょとんとしたその表情は愛らしかったが、今はそれどころじゃない。
「え? 言ってなかったっけ。緑谷くんとは大学のゼミが同じだったの」
「聞いてねえ!」
爆豪の声が低く、鋭く響いた。彼女の大学が緑谷と同じだということは知っていたが、まさかこんな形で関わりがあるとは思いもよらなかった。
──出久のやつ、俺が出会うずっと前から名前のこと知ってたんか。
胸の奥に小さな棘が刺さるような感覚が広がり、苛立ちが込み上げる。
「あいつと仲、いいのか」
「う、うん。たまにゼミのメンバーと飲みに行くよ。緑谷くんは来れない時が多いけど」
「……」
沈黙が流れる中、その空気に気づいたのか少し慌てた様子で話を続けた。
「爆豪くんの話題になったけど、余計なことは言ってないから安心して」
「俺の話題?」
「かっちゃん、彼女のこと全然教えてくれなくてずっと無視されてるんだよねって」
「はあ?」
「本人が言うまで待ってあげてって伝えたから」
「自分が彼女だって言えやよかっただろ」
しかし名前は困ったように笑った。眉の端がほんの少し下がり瞳がどこか曇って見える。
「だって、爆豪くんが隠してるってことは何か理由があるのかなって思ったから」
その言葉には、かすかな寂しさが滲んでいた。
隠していたわけではないし、紹介するのが嫌だったわけでもない。ただ、緑谷に名前を紹介するという行為が照れくさく躊躇していただけだった。
くだらない理由かもしれないが、爆豪にとっては大きなハードルだったのだ。だが、それがこんなふうに彼女に寂しさを感じさせてしまっているとは。
「チッ」
爆豪はサイドボードに置かれたスマホを手に取り、無言のまま画面をいじり始めた。呼び出し音が低く室内に響き、緊張感がじわりと漂い始める。
「爆豪くん?」
おそるおそる声をかけると、爆豪は人差し指を唇に当てて静かにするよう合図した。
「──俺だ。テメェ今日名前に会ったそうだな。……ああ、そうだ。余計なこと聞きやがって」
電話の向こうから微かな声が聞こえ、相手が緑谷であることが分かる。名前はハラハラしながら爆豪を見つめたが、彼は至って落ち着いた様子で話を続けている。
「いいか、名前は俺のだから手ェ出すんじゃねーぞ。わかったな」
「えっ」
突然の宣言に名前は思わず声を上げた。慌てて口を手で覆うも、爆豪は気にせずスマホに向かって話し続ける。緑谷が何か言うのが聞こえた気がするが、無視して通話を切った。そしてそのまま無造作に放り投げる。
名前は目を丸くしてその様子を見ていた。まさかこんな形で緑谷にカミングアウトするとは思わなかったのだ。
「緑谷くん、きっと驚いてたよ」
「かもな」
爆豪は鼻で笑いながら、ちらりと名前の方を見やる。嬉しさと恥ずかしさが相まって複雑な表情を浮かべている彼女を見て、満足気に口角を上げた。ゆっくりと覆い被さり、顔を寄せる。そしてそのまま唇を重ねて体をまさぐっていくと、その体はすぐに熱を持つ。
「仕切り直し」
ニヤリと笑う彼の姿に、名前の心は震えた。抑えきれない欲望が湧き上がり、溢れる気持ちをキスに乗せて、二人は溶け合う時間に溺れていく。
名前が微笑むと、爆豪もまたこの上なく幸せそうな表情を浮かべていた。
完