indigo elegie

覚悟して -extra-

「ここ寝癖ついてる」

 事を終えた後、そのままカドックの部屋で過ごした。目が覚めると体が重いし、カドックを受け入れてた場所はジンジンと痛い。ああ、本当にしたんだ、と実感する。
 わたしの指摘にカドックが指で髪を梳くと、跳ねていた毛先が綺麗におさまった。
「おまえもついてるぞ」
 カドックが手を伸ばして髪の毛を触ってくる。どうやら後ろ髪が跳ねているらしい。手櫛で髪を整えるわたしを見つめながらカドックは目を細めた。視線が柔らかくて、なんとなく照れくさくなってカドックに背を向ける。でもすぐに背後から抱き寄せられて背中に温もりを感じた。
「体はどうだ」
「大丈夫。なんかまだ入ってる感じがする」
 正直に答えると、カドックの体が微かに揺れた。振り返って顔を覗き見る。唇は引き結ばれたままだけど耳の端が少し赤かった。昨日、体を重ねてる時はあんなに余裕そうだったのに変なの。
「そういえば。やめてって言ったのに全然やめてくれなかったよね」
「うっ……それは、悪かった」
「ふふ。でも次は、えっと……その、スムーズにできるんでしょ」
「う、ん。まあ……」
 歯切れの悪い返事に首を傾げる。するとカドックが気まずそうに頭をかいた。
「ごめん。僕が我慢できなかった」
「え?」
「おまえが欲しくて止められなかった。反省してる」
「ひっ」
 ストレートな言葉に頰が熱くなる。自分の欲望を抑えきれず、無茶をさせてしまったとカドックは謝っている。だけど、経験のないわたしを気遣いながら丁寧に優しくしてくれた。ずっとカドックはわたしに触れて、大丈夫だよ、と安心させてくれた。
 だから怒っていないしむしろ嬉しい。嬉しくて、愛しいと思う。
 カドックの腕に自分の手を重ねて頰を寄せた。
「いいよ。カドック優しかったし」
 安堵の溜め息と共にカドックはわたしの体を抱きしめた。首筋に顔を埋められて、肌に吐息がかかる。
「藤丸」
「なに?」
「立香」
「はい。……ん?」
 なぜフルネームで呼ばれたんだろう。と、思った瞬間。顎を掴まれ振り向かされて、そのまま唇を塞がれた。突然の口付けに体が強ばる。軽く触れた後、唇が離れて至近距離で見つめ合う。
「立香って呼んでいいか」
「え? あ、ああ!」
 そういうことか。彼の意図が分かって、こくこくと頷く。名前で呼んでくれるサーヴァントも多くて当たり前になっていたけど、そういえばカドックに名前を呼ばれたのは今が初めてだ。改めて呼ばれるとなんだか特別な響きに聞こえる。というか、かなり照れる。どうしようこの空気。頰が熱い。
「立香」
 わたしの戸惑いなどよそに、カドックは名前を呼ぶ。慣れない響きがくすぐったい。
 ああもう。
 いたたまれず手で顔を覆い隠したわたしは気が付かなかった。カドックもまた、負けじと頰を染めていたことに。

 

 fin.

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