窓から差し込む朝日に、ゆっくりと瞼を開いた。ぼーっとして頭が働かない。何度か瞬きを繰り返すと、次第に視界がはっきりしてきた。視線を彷徨わせると、こちらを見つめるリヴァイと目が合った。ベッドに肘をつき、少し寝癖のついた髪で彼女を見下ろしている。
―――おはようございます。
いつものように挨拶をしようとしたが、掠れた声しか出なかった。それでもリヴァイは察してくれたようで、「ああ」と返事をした。上半身を起こすと、サイドテーブルに置いてあった水を差し出した。彼女はそれを受け取ると喉を潤す。冷たい水が渇いた粘膜に染み渡るようだった。
彼女が落ち着いたところで、リヴァイは口を開く。
「身体は大丈夫か?」
リヴァイの言葉に、昨夜の情事を思い出して頬が紅潮していくのを感じた。彼女は恥ずかしくなり、シーツで顔を隠すように覆う。
「だ、大丈夫です」
「そうか」
シーツの上からぽんぽんと頭を叩かれ、それから剥ぎ取られた。
「あ……」
「いいから隠すな」
そう言うと、リヴァイは彼女の手を掴んで引き寄せる。バランスを崩した彼女を、リヴァイは胸に抱いた。肌を通して伝わってくる温もりに、ほっとする。安心したように息を吐くと、リヴァイの胸元に擦り寄った。その仕草はまるで甘える猫のようだ。
「そんな可愛い真似をするんじゃねぇよ」
困った奴だと言わんばかりに呟かれた言葉だったが、声音には甘い響きが含まれていた。リヴァイの腕が彼女の身体を強く抱きしめる。素肌と素肌が触れ合い、お互いの体温が混ざっていく。互いの鼓動が共鳴するようにどくん、どくんと脈打っていた。このまま時が止まればいいのに、と思うほどに穏やかな時間が流れる。
二人は暫くの間、ただそうしていた。互いの存在を確かめるかのように。
明日になれば調査兵団は壁外へ向かう。同じ朝を迎えられる保証はない。リヴァイの腕の中で、彼女はぽつりと呟いた。
「兵長。務めを果たしてくださいね」
リヴァイの胸に額を押し当てたまま言った。この世界は残酷だ。人はあっけなく死んでいく。だから少しでも長く、共に過ごす時間を慈しみたかった。
「努力する」
淡々と答えたリヴァイに、彼女はくすりと笑った。
──調査兵団の本分は生きて帰ること。
心臓の音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じる。
この音が絶えることのないように。
そして、自分たちがまたこの場所に戻って来れるように。
祈りを込めて、そっと彼の背中に手を回した。
fin.
il Mattino dopoー翌朝ー